2016/03/16

オイコノミア「人脈づくりは怖くない!」

春は、別れと出会いの季節。人脈を築くためにどうすればよいか、経済学の視点で考えてみます。

舞台は、千葉にある航空科学博物館で、ゲストに、春香クリスティーンさんを迎えてお送りします。

友だちの作り方が分からないという春香さん。又吉さんも、上京したてのころは、まったく友だちがいなかったと返します。

皆さんは人脈という言葉に、どういうイメージを持っていますか。
春香さんは、「人脈」って派手なイメージがあり、「人脈のある人は成功者」と考えています。そして人脈作りはカンタンなことではないと思っています。

そして、「飲み会を途中で抜けて、外に出て、会の終わりころにまたもどってくる」という根暗なエピソードで盛り上がる春香さんと又吉さん。二人とも同じ経験があるようです。私も共感しました。

1. 人脈を形にしてみる

人を○におきかえて、人と人とのつながりを線で表してみます。一人と一人の関係は、○―○のように表すことができます。
人脈が豊かな人からは、この線が、何本も伸びます。

ここで質問です。あなたが世界で一番会いたい人は誰でしょう。
この問いに、春香さんは「ドイツのメルケル首相」、又吉さんは「マラドーナ」と答えました。

それでは、自分から何人の人を仲介すれば、会いたい人に会うことができるでしょうか。

この問題についての研究によれば、平均6人を介せば、世界中どこの人とでもつながるとされています。

そのことを実証する実験は、数多くあり、なかでも有名なのが、イェール大学の心理学者スタンレー・ミルグラム教授によって1967年に行われた実験です。
 この実験ではネブラスカ州オマハの住人160人を無作為に選び、「同封した写真の人物はボストン在住の株式仲買人です。この顔と名前の人物をご存知でしたらその人の元へこの手紙をお送り下さい。この人を知らない場合は貴方の住所氏名を書き加えた上で、貴方の友人の中で知っていそうな人にこの手紙を送って下さい」という文面の手紙をそれぞれに送った。その結果42通 (26.25%) が実際に届き、42通が届くまでに経た人数の平均は5.83人であった。(wikipediaより)
この実験に対しては、世界がつながっているのではなく、アメリカ国内がつながっているだけじゃないかというツッコミがされました。

2002年に、ダンカン・ワッツらが行ったのは、eメールを使った実験です。この実験では、10万人近い被験者を募り、世界中の指定された目標にむかってメッセージを送るように指示を出したのです。その結果は、平均6人で到達するというものでした。(参考サイト)

そして、現在のSNS時代。Facebookがミラノ大学と共同で行った調査では、平均4.74人を介せば全ユーザーとつながることが判明したのです。(ニュースサイト調査結果原文)

このような、人間関係のつながりは、なんだか、飛行機の路線図のようにも見えてきます。











国内線で例えてみると、羽田空港のように数多くの空港と結ばれている空港がある一方、離島のように一つの空港としか結ばれていないところもあるのです。羽田空港のような、ネットワークの中心にある空港のことをハブ空港と呼びます。

人間関係にも、知り合いが多い人と少ない人がいるわけで。知り合いの多い人は、ハブの役割をしているといえます。そのようなハブの役割をしている人と知り合うだけでも、その先に人脈が広がる可能性があります。

又吉さんは、知り合いの後輩が多く、1対1で、しばしば顔を合わせることによって、つながりを築くように努力しているそうです。

2. 人のつながりで就活する・採用する

人間関係のつながりを、採用活動に生かしている企業もあります。
番組で紹介された会社は、ユニークな採用方法をとっていました。求人広告を出すのではなく、社員の知り合いを採用するという方法です。この方法のメリットは

  • 会社にとっては、採用するためのお金や時間が節約できる
  • 働く人にとっても、知れたメンバー・知れたスキルの持ち主といっしょに働くことができる
ということがあげられます。
このような採用方法を構築した会社として、番組ではリクルートが紹介されました。こういった採用システムは、リファラル採用サービスと呼ばれ、日本でも広がりつつあるようです。(参考サイト)

今いる社員と新入社員の間で、働き初めから良い関係があり、その状態で仕事ができるので、すぐれた方法であるといえます。

3. 「強いつながり」「弱いつながり」

人間関係の強さ(濃さ)に着目した考え方として、有名なものがあります。マーク・グラノヴェッター氏が唱えた、「弱いつながりの強み」という考え方です。

人間関係には、親子や親友といった強いつながりのほかに、たんなる知り合いといった弱いつながりがあります。グラノヴェッター氏は、有益な情報をえるためには、弱いつながりで結ばれている人を利用した方がよいと考えました。なぜなら、強いつながりを持つ人どうしは、同じ情報を共有することが多く、新しい情報を手に入れることが難しいからです。

参考サイト"ITmedia エンタープライズ","wikipedia"

この「弱いつながりの強み」という考え方は、現代のSNS時代にはとても適した発想です。「弱いつながりの強み」を実感をともなって知ることとなったのは、東日本大震災が大きいといえます。このとき、必要な物資やボランティアについての情報の多くが、SNSを通じてやり取りされたのです。