2016/02/17

オイコノミア「勉強するのは誰のため?教育の経済学」 貧困の連鎖から抜けるための1つの方法があります

きょうは、教育について考えてみます。勉強するのは、もちろん、まず第一に自分のためです。でも、自分のためだけでしょうか。これがテーマです。

冒頭で、又吉さんが「2015年 フェリス女学院中学校」の問題を解いてみます。
あなたがこれまで学校で学んだ教科の中から二つ以上をあげ、それらをゆう合させるとどのようなことが学べると思うかを180字以内で自由に書きなさい。
解答例はのちほど。

1.  ICTを使った教室

ICTとは、Information Communication Technologyの略で、情報通信技術ということです。

まず、番組で紹介されたのが、未来の教室(FUTURE CLASS ROOM)のデモンストレーションです。この教室は、内田洋行が提案している商品です。正面の黒板だけではなく、まわりの壁もモニターになっていて、動画を映すことができるので、未来を感じます。

内田洋行というと、なじみのない社名かもしれませんが、一般のオフィス用品のほかに、学校では机・いす、ビーカーなどの理科教材を手がけている会社です。

そして、学校での取り組みとして、筑波大付属小学校が紹介されました。

2. 勉強は何のため?

ここで登場したのが、厚切りジェイソンさんです。
わたしは、バラエティはイッテQくらいしか見ないので、彼の雄姿をテレビで見たのはこれが初めて。お笑い芸人というよりは、上場会社の役員さんとして知っていました。(横道にそれるけど、リンク先にある「厚切りジェイソンさんの一言アドバイス」は、見ておいて絶対に損はない)

ジェイソンさんが、自分の4歳と1歳の娘に、日本で教育を受けさせるかどうか悩み中とのこと。

まず、勉強は何のためにするかを考えます。

憲法にも、子に教育を受けさせることが義務である、と書かれています。
なぜ、ここまで強く、教育が必要とされているのでしょうか。

それは、教育には、外部性(=金銭のやり取りなしにほかの人に利益・損失が生じること)があるからです。
教育の外部性とは、教育を受けた本人だけではなく、社会全体にメリットがあるという意味です。

教育のおかげで、経済力が上がったり、犯罪率が下がったり、技術革新が進んだり、いいことづくめです。

このようなメリットがあるから、教育に公的資金(税金)をつぎこむことが望ましいのですね。

ここで、日本の状況をみると、GDPに占める教育機関への支出割合が、3.5%となっています。OECD加盟国の平均が4.7%であることを考えると、これは低い数字です。日本は、6年連続で最下位なんだそうです。引用元

このように低い数字となっているのは、「教育は誰のためか」についての考えがそれぞれの国で違うためです。

ヨーロッパでは、教育への投資はいずれ社会に戻ってくると考えています。ですから、多くの国で、大学までの学費が無料だったり、とても安かったりするのです。参考サイト

「日本では、教育は私的財」「ヨーロッパでは、教育は公共財」と分けることができます。

3. 教育にお金がかかりすぎる問題

教育を「投資」として考えると、将来豊かになるためには、教育は良い投資です。ただし、結果が出るまでに時間がかかるという弱点があります。

ジェイソンさんは、次のように指摘します。日本では、高齢の政治家が多いです。そのため、自分が生きているうちに教育の効果は出ないから、教育にはあまりお金をかけなくてもいいやと思ってしまうのではないか。

そして、教育は、お金がかかりすぎる投資でもあります。

子どもは、2人、3人と欲しいのに、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」作れないと答えた母親が60%を上回っています。(「国立社会保障・人口問題研究所」の調査。詳細はこちら)

自治体の中には、がんばって教育に多くの投資をしているところがあります。
番組で紹介されたのは、品川区立の小中一貫校(豊葉の杜学園)です。小学1年生から中学3年生までが同じ教室の中で過ごす、というめずらしい様子が放送されました。

ちなみに、ウィキペディア情報では、全国にけっこう小中一貫校があるんですね。私の住んでいる埼玉県川口市では、耳にしたことがないから、世間知らずでした。

品川区では、小中一貫教育のおかげもあってか、5歳から15歳までの子どもが、過去10年の間に20.4%も増えています。これは、東京23区平均の6.4%を大きく上回っています。

品川区長の濱野 健氏に又吉さんがインタビューしました。
市長の話では、学校側が、保護者に対して「うちの学校はこんな特色があります」というメッセージを出すようになったのが大きな変化だということです。学校が自分たちを選んでもらうために、学校の特徴を露出するようになったのです。このような取り組みは、日本全体の教育のレベルアップにつながるのではないか、と濱野市長は考えています。

4. フタコブラクダ問題(学力格差の二極化)

これは、クラスの中で、勉強ができるグループとできないグループの2つに分かれてしまう問題です。
この問題について、坂東太郎氏の意見がよくまとまっていました。

又吉さんは、別の物差しではかれば、勉強ができない子の能力を正しく評価することができるはずだと考えます。そして、人間として、勉強以外の能力が大切になる場面もあるのです。確かに、それも一理あります。

5. 又吉さんが日能研を訪問

学校の勉強のほかにも、どうして塾に行くの? ジェイソンさんが疑問に思っています。

文部科学省の調査により、小6で4割近く、中3で7割近くの子どもが塾に通っていることが分かりました。(この調査、親と子ども合わせて10万人以上を対象にした大規模なものです。教育行政に生かされているかは不明)

そこで、又吉さんが、大手学習塾の日能研をおとずれます。入試問題を題材にして、電車の中に広告を出すことで有名な塾ですね。

国の政策に左右されない教育を追求することができるのが、塾のいいところです、と日能研の人。学校の勉強では足りないところをおぎなうのが塾の役割だと考えています。

ここで、さきほどのフェリス女学院中学校の問題について。
又吉さんの解答は、こんな感じでした。
サッカーが学べます。「算数」によって、味方と敵の関係が数的有利にあるか不利にあるかを把握し、「音楽」で学んだリズムで味方との呼吸を合わせ、その応用で相手のリズムを狂わせます。サッカーはほとんどの日常で起こることの例えとして使えるので、人生も学べます。 ※中略
略する前のもとの文は、180字を超えてしまったので、残念ながらバツがついてしまいました。内容は、ほめられていたのですが。

6. お金がないと勉強できないの?

塾へ行くのも、お金がかかります。
文部科学省の調査によれば、公立中学校の学習費は約48万円で、そのうち塾などの学校外の活動費は約31万円です。この10年間の中で、もっとも高額になりました。

また、放課後をどう過ごすかも、家庭の経済事情に左右されます。収入の多い世帯の子どもの方が、より高い学歴を手にできるという調査もあります。

現在、子どもの6人に1人が相対的貧困の状態にあるといわれています(引用元)。とくに「ひとり親」の家庭では、貧困率が高くなります。そのため、学びたいと思っていても学べない子どもがいるわけです。

そのような子どもたちを支援する公益社団法人として、「チャンス・フォー・チルドレン」が紹介されました。

この団体では、集めた寄付を元手に、クーポン券を発行しています。このクーポン券は、塾や習い事にだけあてることができ、子どもたちの学習の機会を確保しています。お金で受け取ると、親が生活費などにあててしまうかもしれませんから、これは良い取り組みです。

活動の実績としては、一人あたり15万円~30万円のクーポンが、のべ1,000人の子どもたちに配られたそうです。

お金のない家庭の子は、「自分のうちにはお金がない」ということを分かっていて、自分の教育のためにお金が使われることに後ろめたさを感じてしまう。でも、このクーポンでは、そういった後ろめたさを感じずに学べる点がすぐれているのです。