2016/02/02

オイコノミア「そのお稽古 役に立つ?」

子どもに習わせるおけいこごとって、どんな意味があるのでしょうか。
そして本当に役立っているのでしょうか。

今回のオイコノミアでは、そういったことについて考えます。

ゲストは、つるの剛士さん。6歳、8歳、10歳、11歳の4人の子をもち、それぞれにおけいこをさせているお父さんとして、登場しました。

1. つるのさん・又吉さんが自分のおけいこを語る

まずは、子どものころに何を習っていたかを紹介。
 つるの・・・3歳ころからクラシックギターを父親に習った
 又吉・・・小学校3年からサッカーを始めた

では、二人は、(1)子どものころ、おけいこについてどう感じていたの?
そして、(2)いま振り返るといいことがあった?
 つるの・・・(1)イヤイヤ教えられていた。
        (2)音感やリズム感が養われた。
 又吉・・・(1)初めはしんどかったが、途中から楽しくなった。
              (2)今の人生に生かされている。

経済学では、おけいこには2つの面があると考えます。
ひとつは、今の楽しみのためという「消費」の面。
もうひとつは、将来に役に立つためという「投資」の面です。

子どもが楽しめて、そのうえ将来の役に立てば理想ですね。

2. おけいこの現場で

ここで、30個近いおけいこ教室が集まった子育て支援施設「グロースリンクかちどき」が紹介されました。

どうしておけいこをさせているのか、何人かのお母さんにインタビューしてみます。
  • したいことをやらせる。
  • 自分は泳げないので泳げるようになってほしい。
  • 運動をやらせたい。女の子らしくなってほしい。
  • 字がきれいになってほしい。元気な女の子になってほしい。
そして、つるの家の次女のおけいこスケジュールを紹介。
なんと、1日2時間のおけいこを週5日もやっているとのこと。

それだけやっていると、一体いくら使うのかが気になります。
さすがに、つるの家の「ふところ事情」までは、明かされませんでしたが
番組では、家計に占めるおけいこ費用の割合が紹介されました。

引用元は、ここです
アクサダイレクト生命「 第2回 子どものおけいこ事に関する意識調査」

これによれば、世帯年収に関係なく、平均して収入の7~8%をおけいこに支払っているとのこと。

年収600万円なら、月4万円近くという計算です。すごい金額。

ただし、これは、平均値のマジックだと思います。
1回目の調査をみると、収入の5%未満しかおけいこ費にあてていない世帯が、世帯全体の70%前後を占めています。

ようは、多額のおけいこ費を使う少数派の世帯が、平均値をだいぶ押し上げているのです。

それでも、多くの世帯が、少なくない額をおけいこにあてています。

3. 「5歳までのしつけや環境が人生を決める」

だからこそ、効率的にいい結果になるようなおけいこをさせたいものです。

そこで、経済学では、いつ子どもに教育をさせるか、という研究が注目されています。

代表的なものは、ノーベル賞を受賞したジェームズ・ヘックマンの研究です。
ポイントは、「5歳までのしつけや環境が人生を決める」。

研究内容の詳細を調べようと思って検索しました。
なんと、オイコノミアでおなじみの大竹文雄先生が、ヘックマン氏の
研究を日本に紹介したそうです。くわしくはこちら

研究によれば、5歳までに適切な教育で土台を作ると、その後の能力が身に付けやすいとのこと。

研究の一環として、貧困家庭に育ったアフリカ系アメリカ人の3歳・4歳の子を対象に、教育プロジェクトで学習させます。
彼らのその後を、40歳まで追ってみると、
  • 14歳の基礎学力
  • 高校卒業率
  • 40歳の月給2000ドル(約24万円)以上の率
  • 40歳の持ち家率
などにおいて、プロジェクトで学習していないグループと明らかに差がついたというのです。

ただし、知識をつめこむ学習をすべきというわけではありません。
氏の研究によれば、「5歳までの土台作りは、非認知能力を伸ばすことが重要」だそうです。

非認知能力とは、学力・記憶力といった「認知能力」以外のものです。
具体的には、協調性・やる気・社交性・自制心などがあります。

それでは、非認知能力はどのように伸ばすことができるのでしょうか。
玉川大学の大豆生田(おおまめうだ)啓友教授に、又吉さんが聞いてみました。

教授は、非認知能力を伸ばすためには、たとえば泥だんご作りのような「遊び」が関わってくると考えています。

幼いころの遊びの体験が、小学校にあがってからの「積極的に向き合う力」「将来につながる力」といった力に生かされるとのことです。

ここで、又吉さんが次のような話をしました。子どものころ、自分で新しい遊びを考えて、友だちといっしょに遊び、みんなに喜んでもらったという経験が今につながっているというのです。

又吉さんの話は続きます。
初めはできなかったリフティングも、練習を重ねて600回もできるようになった。
その経験が、何度も本を読んで意味を理解しようとする姿勢につながった。
名作を数多く読んだおかげで、自分の書く文章のおかしいところが分かるようになり、そこを何度も修正することで、良い文章が書けるようになった。

良い文章を書くために、サッカーを始めたわけではないのです。
ものごとに向き合う姿勢そのものが大切なんですね。

大人は子どものために、先を考えて「何かさせなきゃ」って思います。
しかし、子どもにとっては、今、何かに夢中になること、熱中すること、興味や関心を持つことが大切なのだと、教授も指摘します。

4. 続けさせるか? 辞めさせるか?

おけいこの大きな悩みどころですね。
インタビューを受けたお母さんたちも苦労してるみたいです。

そこで、どういうごほうびをあげれば、子どもにとって効果的でしょうか。
  1. 成績が良かったらあげる
  2. 宿題をしたらあげる
正解は、"2"で、すぐ手に入るごほうびが効果的なんだそうです。
その理由は、人間は、将来よりも目先のことを優先させる傾向があるからです。

このことを「双曲割引」と呼んでいます。そして、「双曲割引」は、大人よりも子どもの方により強く見られます。

ここで、子どもにやる気を出させるコツとして、つるの家の天才的な
アイデアが紹介されました。それは・・・

子どもそれぞれに貯金箱を置いて、つるのさんがお金を入れていきます。このとき、子どもの頑張り次第で、貯金箱ごとに入れる額を変えるのだそうです。
そして、それを月1回、子ども同士で見せ合うとのこと。

それでも、子どもがおけいこを続けたくない場合はどうでしょうか。
途中でやめたら、今まで払った分が無駄になってしまう気がします。

このような場合、「すでに支払ってしまって取り返しがつかない」費用のことを、経済学では、「サンクコスト」と呼びます。サンクコストにこだわりすぎると、さらに損してしまうことがあるのです。

向いていないと思ったら、割り切って辞めてしまうのも一つの方法です。
時間やお金をほかのことに使えばいいわけです。

5. おけいこと「文化資本」

又吉さんが、たとえ話をするときに、サッカーを例に出すように、おけいこが自分の「言語」になるという面もあるのです。

仮に職業に結びつかなかったとしても、おけいこが自分の言葉になって生きる糧となります。

このように個人の中に蓄積された文化的素養を「文化資本」と呼びます。文化資本により、人生をより楽しめるというわけです。

つるのさんも又吉さんも、ご両親が共通の趣味を通して出会ったとのこと。
文化資本が、男女を結びつけることもあるんだという話で、番組は締めくくりました。


子どものおけいこという問題は、私にとっても、数年後には向き合うことになるはず。思わず、力を入れてまとめてみました。


次回のオイコノミアは、「モテの極意」。モテるために綾部さんが実践していることとは・・・。